還元おとし
|
たまには陶芸工房の日誌らしい話題でも。
窯焚きには大きく分けて、「酸化」と「還元」という焚き方があります。
酸化は、供給される燃料と空気の量が合致している、いわゆる完全燃焼。
還元は、空気の量に対して過燃料で、窯の中が酸欠状態です。
酸化の場合は窯から火が吹き出ることはありませんが、
還元だと、炎が酸素を求めて暴れるので、窯の穴から火が噴き出します。
わざと色見穴を一カ所あけて、吹き出す炎の長さで、還元の度合いをはかります。
酸化にくらべ、還元は窯をこまめに調節することが必要になります。
ふつうは最終温度に達して、しばらくねらしをいれて焼成終了。火をとめます。
母校の窯で、fumiが学生さんたちといっしょに還元おとしをするというので、見学してきました。
還元おとしというのは、ふつうなら、ここで終了!という最終温度に到達した後も、すぐに火をとめてしまわずに、還元をかけながら徐々に温度を下げていくので、時間がさらに何時間もかかるのです...!まさに「ヂゴクの還元おとし」の異名をとる、ハードな窯焚き。
朝から窯詰めをし、夕方に点火、徐々に温度をあげ900度位から還元をはじめるのが夜中の2時頃。夜を徹して還元をかけながら温度を1245度まで昇温し、還元おとしにはいるのが翌朝10時。
私が行ったのは還元落しにはいる直前の朝9時半。
徹夜明けのみなさんに、食料の差し入れとともに強力なカンフル剤を投入。
疲れと眠気でドローンとしていた窯場に部長が登場するなり、「わー、うわさの部長がきたー!」
「かーわーいーいー!」と黄色い歓声が...みんなからアイドル扱いされ部長は得意げ。女子学生のみなさんにかこまれてふんぞりかえっておりました。
急におじゃましたのに、みなさん、快く迎えてくださって、ありがとう。
それにしてもみんな若い、夕方4時半に火をとめて、その後また製作した強者もいたそうな。ウラヤマシイ....その使っても使い切れないエネルギーと急速充電可能な肉体がまぶしくて目がつぶれそうじゃ。
同じ土、同じ薬でも「酸化」と「還元」ではまったく違う色に焼き上がります。
たとえば.....
土にも釉薬にもよく含まれている鉱物の鉄。
これは酸化で焼くときちんと供給されている酸素と結びついて酸化鉄(FeO)になり、茶色になります。
が、還元だと、酸欠状態なので鉄(Fe)青っぽい色になります。
鉄が酸化すると赤茶色い錆が浮きますが、ようは、それと同じ化学反応です。
銅の場合は、10円玉が錆びると青緑の粉を吹くのを思い浮かべるとわかるように、酸化だと青緑になり、還元だと赤茶っぽい色になります。