東海珍道中
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上京する日の早朝6時。
嫌な予感に苛まれ、前夜ハンストを決め込んでいた豆田部長が激しくおなかを下していたのである。
よりによって、こんな時に.....である。
以前、部長が腸炎をこじらせ2週間も動物病院に通ったイタイ記憶が頭をかすめ、これは放置して行く訳にはいかん....!と急遽、7時までには乗るはずだった新幹線の出発便を遅らせる事にした。
病院の診療開始の9時に一番乗りで診察を受け、ぶっすり注射して、薬をもらい、治療の指導をうけて、工房に戻ったのが、午前10時。
恨みがましくじっとりと見つめる部長をなだめて留守番させて、後のことをカレー番長にメールでお願いして、バスに飛び乗り、岡山駅についたのが、10時38分。
48分発の新幹線の切符を、券売機で買い、改札を通り、キオスクでパンとお茶を買って、どどどどどっと、エレベーターを駆け上り、今一度券をチェック。
「ぎゃっ、16号車の3Bって、ホームのはじっこ!」とがっくりしながら、はじっこに到達したところで、新幹線がシューっとホームにすべりこんで来たので、切符をポケットに入れて、乗車!
右のポケットに入れて乗車
した....あれぇぇ〜?ななな、無い.....?
車掌さんに求められて、ポッケをさぐると、出て来たのは、新幹線切符の領収証の方だけ。
一緒にポッケにいれたはずなのに?なぜ?ホワイ?
念のため、カバンの中と財布の中を隅々までさがしたけれど、出てくるはずもなく。両隣の企業戦士の方達にスミマセン、スミマセンとあやまりつつ、座席の隙間や、荷物棚もくまなく探したけど、やっぱり無し。
「多分、ポッケに入れた時にすべりおちた.....岡山駅のホームか、車内のどちらかでおとしたと思う」と車掌さんに告げたら
「じゃあ、岡山駅に問い合わせ、車内の落とし物も捜索してきますので、お待ちください」とのこと。まあ、領収証あるし再発行できるだろうと踏んで、のんびりしていたら、甘かった....。
下車30分前になって、車掌さんがやってきて、「落とし物はどちらにも届いてない。もう一度乗車料金16800円を払わねば、出られないので、品川の出口改札でお支払いください。」
ガビーン.....衝撃通告!!
1年以内に切符が出て来たら、再購買切符の控えとともに駅の窓口に出せば、払い戻しが受けられますから....と言われたが、はたして出てくるものなのか.....?
やめて、そんな気休めは....これは、置いてけぼりにされた部長の呪いだわ....。
ヨロヨロと品川で降車し切符を再購入。
なんとか気持ちを立て直し、スーツケースを後々乗り換えに便利な新宿に置いておこうと思い、新宿のホームを上がりロッカーに行くと、なんと、APECの為に警備強化でロッカーが利用出来にゃい!!
結局、三鷹までゴロゴーロ。重い.....重量が倍に感じられるのはなぜだっ?
帰りは吉祥寺駅から乗る予定なので、三鷹駅からギャラリーまでの徒歩10分も、ゴロゴーロガガアーグヮラグォロ、ガックン、ゴゴゴ....
嗚呼、とっても瀟酒な川沿いのレンガ道....このときばかりは、恨めしい。
ヨレヨレでギャラリーにたどり着いたのは、3時半。
遅くなったお詫びをして、あった出来事を述べると、みんなに慰められてちょっと癒える。
こういうことがあった後に宝くじを買うとあたるのだ!と勝手な迷信を信じて、まだ買ってもいない宝くじをあてた後の事を妄想して切符を落したダメージから眼を背けて気をとりなおす。単純。
その後。落とし物センターにもう一度問い合わせるも、岡山駅にも東京駅にも切符の落とし物は届いておらず。どっちも電話口で5分も待たされて、結局無かった。
やっぱりな....とは思うが、なんか、もう、初日でヘトヘトに疲れたのだった。
2日目は沢山のお客さんがいらして、楽しく過ごし、もう、すっかり切符のことを話のネタにしていたのだが、新幹線の落とし物は翌日の午後に東京駅に回収されると言われていたので、3日目最終日に、もう一度東京駅に問い合わせた。
そしたら、なんと、あった.......!!
電話口のおじさん、
「...お待たせしました。もういちど、切符の事を確認させてくださいね。お乗りになったのは、のぞみ18号.....」
「ハイ。18号の16号車です。」
「16号車ね、で、座席は、3の....」と、この時点でおじさんの声が大きく弾んでいたので、(あ、あった....)と確信したのですが、なんか、おじさんの方がワクワクして、もったいつけていたので、調子をあわせて、かなり大げさに喜びました。
「はい、3のBでした。」
「のぞみ18号、16号車3のB。はい!ありましたよお〜」
「ええええ〜!ほんとですかああ!?」
「ほんとです!もうね、奇跡ですよ〜、奇跡。(だんだん声がでかくなるおじさん。)いまっ、この僕のっ、手もとに届いています。」
「ありがとうございますぅぅっ!」
「おめでとうございますっ。よかったですね!よかったですね〜っ!!」
ちょっと芝居じみていた忘れ物センターのおじさんも、ギャラリーのみなさんも我が事のように喜んでくれて、半分あきらめていただけに、とっても嬉しかったです。
でも、切符一枚を送るだけなのに、送付手段はゆうぱっくしかダメで、900円。払い戻し手数料500円。ほんの少しのうっかりが招いた、ドタバタ劇とちょっとイタイ授業料。
これに懲りて、慎重行動をこころがけよう!!と、心に誓い、一件落着.....
と思うよね、普通は。
誓った矢先の帰りの高速で、またしてもやらかすのが、あたし。
ずっと井内さんが軽トラを運転をしてくれているので、これは、疲れや眠気を誘わないようにオモロイ話をし続けなければ!と声が枯れるほどヤンヤヤンヤとしゃべり倒していたら、逆に井内さんの気をそらせすぎて、吹田JCTで名神から中国道に行かねばならないところで、まっすぐ近畿道の方へ直進......。
折角、日曜日の夜に高速に乗ったのに、いったん一般道に降りて中国池田に乗るルートを取らざるを得ないはめに陥れるというポカをやらかし、ここでも追加出費。
まったく、学習能力のなさを露呈した江戸道中なのでありました....。